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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2012/06/html/d29589.html
中国崑崙山の仙人(31) 太極元真鳥
二十一、太極元真鳥

 平先生は車上で座禅を組んで座り、口は閉じたまま各種の手信号によって、龍たちが陣立てして作戦するよう指揮した。一つの手信号が一つの意味を示しており、私にはよく分からなかったが、龍たちは分かっていた。彼は龍陣を指揮し、妖陣と対峙していたが、両方とも甲乙付けがたく、妖怪たちが攻め入ることができなければ、私たちもそこを出ることができなかった。

 突然、妖怪たちは黒衣の妖道士の指揮下で、迅速に陣式を変えた。それらは一つ一つが繋がって連なり始め、頭と尾が繋がり、尾と頭が繋がり、一個一個が繋がって、最後に一体となった。黒衣の妖道士はそれの頭に立っていた。突然、妖道士が黒衣を広げると、黒衣は伸び始め、伸びれば伸びるほど長くなって、大きくなり、最後に全ての妖怪たちを中に収め、一枚の蛇の皮となった。

 突然、それらが揺れ転がると、一匹の黒い蛇に変身した。妖道士は蛇の頭となり、ほかの妖怪たちは蛇の体となった。蛇は天地の気を吸い込みながら、変われば変わるほど大きくなり、変われば変わるほど長くなり、最後に私たちを囲んで2周巻いた。これまでこれほど巨大な怪物は目にした事がなかった。とても怖かった。この時、頭の中から平先生の声が聞こえてきた。彼は、この陣は打ち破ることができるので、恐れないで、と話してくれた。私は不思議に思い、振り返って見ると、平先生は依然として口を閉じたまま、龍たちを指揮していた。口を開かなくても、彼の声は私の頭の中に直接打ち込まれたのだ。また、私が話さなくても、その考えはすぐに彼には分かっていた。彼は、攻撃の指示は出さずに、静かに観察していた。そして、また声を私の頭に打ち込み、何があっても冷静を失ってはならず、不動で万動を制し、まずは事態を観察することが第一歩だと話した。私はだんだんと心が静かになった。

 突然、蛇は激しく頭を上げ、立ち始めた。それは頭を空中にもたげ、赤い舌をちろちろと吐き出し、口の中からは煙と火の星を噴出しており、高さは千丈にも達していた。私は怖くて、びっくりした。蛇は私たちに向けて大きな口を開き、息を吸い始めた。すると、地上の砂と石は皆飛びはじめ、それの口に吸い込まれた。天車も激しく揺れ、それの口に向かって吸い込まれていった。龍たちは全力を尽くして前に向かって天車を引き、それの引力から抜け出そうとしたが、逃げられず、それの口へますます近づいていった。

 この時、平先生は口の中で呪文をつぶやき、手を振ると、突然一匹の黒影が彼の袖の中から駆けていき、地上に降りると、一匹の巨大な黒い怪物となった。それは目がとても小さく、色は赤で、口もとはひげが生えており、体はねばねばして、口の中は鋭くて比類がない歯がたくさん生えていた。それは地面に降りると、口を大きく開き、蛇を噛み始めた。蛇は一瞬驚き、吸い込みを止め、頭を下げてそれを見ていた。しばらくすると、この黒い怪物は、蛇の体を大きな穴を噛んで開き、その穴からそれの体内に入っていった。蛇は地上で激しく揺らし、それを体内から追い払おうとしたが、何の助けにもならなかった。黒い怪物は蛇の体内を必死に噛み、一つ一つの穴を開けていった。間もなくの間、蛇は九つに切られた。黒気は去って行き、また不完全な手と切られた足の持つ妖怪たちとなり、それらはあちこちに転がっていた。

 この怪物はいったい何なのかと私が尋ねると、それは「蜮」だと、また頭の中から平先生が答えてくれた。私はなるほどと、悟った。私たちが快勝したと思っていたところ、妖怪たちを指図していた妖道士は、人間の形に化した妖人たちを連れて、座禅を組んでぐるりと一周囲み、口では何かをつぶやいた。

 妖人たちは何をしているのかと私が尋ねると、それらは自分の師父に助けを求めるのだと平先生は言った。それらの師父の正体が分からず、どの次元からきているのか分からないと、平先生は少し心配のある様子だった。

 私たちが心配している最中、突然、天が切り開かれ、一羽の巨大な鳥が飛んで入ってきた。それの後ろにはそれと同じ模様の一群の鳥たちが後をついてきたが、大きさはそれほど大きくはなかった。

 「大鵬鳥だ!」平先生は急いで私に教えてくれた。大鵬鳥は龍の大敵で、状況はとても危険だった。平先生は急いで龍たちを呼んで、車を引いて速やかにそこを抜け出そうと指示した。しかし、もう遅かった。それらは追ってきて、私たちが乗っている天車を囲んで飛び舞い、利爪を伸ばして、龍たちを掴んでいた。情勢は非常に緊急だった。多くの龍たちはそれに啄まれたり、引っかかれたりして、傷だらけとなり、それに勝てず、傷を持ったまま次から次へと、水の中へ跳び込んでいった。

 この時、水の中の独角魚が集まってきて、龍たちを中に囲んで、それを噛み千切った。龍がまもなく水底に埋葬されるところ、平先生は急いで、蜮を放し、水の中の龍たちを助けるよう指揮した。その黒い怪物はまた水に潜り込み、しばらくすると、水の中から大きな波が出てきて、たくさんの独角魚が接岸に打ち出された。蜮は水の中で大きな口を開きながら、必死に独角魚を呑み込み、すぐに龍たちを脱出させた。

 なぜ蜮でこれらの鳥を退治しないのかと私が聞くと、蜮は水陸の生き物で、水中の王であるが、鳥獣に対しては対処できないのだと、平先生は言った。私はとてもやきもきした。

 突然、先頭で指図していた大きな鳥が私たちに向かって飛びかかってきた。平先生は急いで金甲神衣を脱ぎ、私の背に掛け、私を庇った。そして、呪文をつぶやき、一匹の巨大な龍に変身し、私を中に囲んで盤旋した。彼は口から雷を吐き出し、巨大な鳥に向けて撃った。鳥は雷を避け、またたくさんの鳥たちを連れ、平先生に向かって飛びかかってきた。それらは利爪を伸ばし、鋭い口先で、彼の体を啄み、引き裂いた。平先生の体の龍の鱗は一つ一つ落され、全身が血だらけとなった。しかし、彼は私を保護するために、依然として私の周囲を盤旋しながら、私を庇っていた。彼は鳥たちを避けることもなく、反撃することもしなかった。

 平先生がとても危険な境地にさらされているのを見て、私は涙が出た。私は空中に向けて頭を上げた。「天空のたくさんの神霊たちよ、なぜ私たちを助けてくれようとしないのか!あなたたちは皆私たちが邪悪に滅ばれるのを見ているだけなのか?」私は憤怒して天空を向かって叫んだ。「誰かが来て私たちを助けてくれ!」

 忽ち、無限の虚空から大きな鳴き声が、時空を一層一層貫いて伝わってきた。大地は揺れ始め、私は頭が震動して裂けるように感じた。忽ち、天が裂けた。そして、一層一層の天が全部裂け、果ての虚空まで至った。

 全ての大鵬鳥たちは一斉に止まり、宙にぶら下がって、反応がなくなり、がたがたと震えるようだった。突然、一筋の白光が天から降ってきて、空中には羽毛が散らばっていた。あの巨大な大鵬鳥は二つに割れ、他の鳥もその振動に意識がなくなり、次々と地上に落ちた。

 この時、私は天から降りてくる暖かさを感じ、巨大な白光が私を覆った。目を閉じると眠気がさした。まるで自分が1隻の小舟の上に横たわり、水面上に漂っているようだった。日光は私を照らし、蓮の花のすがすがしい香りをかいできた。とても暖かくて、これまでにない喜びを感じた。全てがそんなに美しく、素晴らしく感じた。

 どれぐらい経ったのか。私はいっぱい寝て、目が覚めると、神医と平先生が傍に座って私を見ていた。私たちはもう人間の体に戻り、小さい林の中にいたのだ。夜はもう明けていて、午後となっていた。平先生の体には、黒あざとつかみ跡がまだたくさん残っていた。私が平先生の治療を神医に促すと、平先生は笑いながら私を慰めた。彼は、この傷は真体に残っているので、肉体では治せないが、皮肉の傷にすぎないので、しばらくしないうちに自然に治るので、心配は要らないと言った。

 私は、その後は何が起きたのか、一体どうなったのかと尋ねた。平先生は、私が太極元真鳥を呼んできて私たちを救ったと言った。私は驚き、私がどうやってこの太極元真鳥を呼んできたのかと聞いた。彼によると、太極元真鳥は原始の鳥禽で、万鳥獣の王だという。それは元々私の護法霊で、ずっと高境界の空間で私を見守ってきており、私が輪廻し生まれ変わるのを見ており、邪魔に侵犯されないように保護してくれるのだ。しかし、それは私を妨害してはならず、特別に緊急でない限り、現れてはいけないのだという。そのため、私はずっとそれの存在を知らなかったのだ。平先生にさえ、それは知らなかったという。

 私はうなずき、何かを悟った。平先生は、やっと合点がいったと言った。彼によると、彼が私の家に留まっていた時、夜に天象を観察していると、一つの白護星がずっと私の家に向かっており、星の明かりは直接家の扉に向かっていたという。当時、それは謎のままだったが、今はついにそれが解かったというのだ。その白護星はまさに私の護法霊である太極元真鳥であり、ずっと私を見守ってくれていたのだ。
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