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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2012/03/html/d45995.html
中国崑崙山の仙人(17) 豚人
 十、豚人

 夜中になり、私たちは、平先生が10数年前に見かけたという「蜮」にとり憑かれた人が住んでいる町に着いた。人々は寝静まり、その人が今どこにいるのか、どうなっているのかも分からない。とりあえず一晩過ごせるところを探し、夜が明けてからその人物の行方を捜すことにした。

 平先生は神医に、これからは凡人と付き合わなければならないが、自分は彼らと多く接触してはいけない、口では言えない理由があるので、残りのことはお願いします、と言って神医に頭を下げた。神医は急いで手を振りながら、とんでもない、とんでもないと言うばかりだった。

 夜が明けると、神医は町の人々に状況を尋ね始めた。町の人は神医の話を聞くと、すぐに「あなたたちが探しているのは、『豚人』ですよ」と教えてくれた。彼は別の村の方を指しながら、その村には豚を入れる柵があり、「豚人」はその側にある糞便の池にいるので、そこに行けばすぐに会えると言った。しかし、彼は人を噛んだりするので、彼を怒らせてはいけないと言った。また、彼は力がとても強く、逞ましい数人の男性でも彼を諌めることはできないと言った。

 彼らに教えてもらった通りの道を行くと、周りが塀で囲まれた屋敷が見えた。中には、二つの大きな柵の囲いがあり、そこで養豚されていた。囲いの側は下水溝で、豚の糞便は全部そこへ排出していたが、中は糞が厚く積み上げられていて、水は黒く、ひどい悪臭を放っていた。

 私たちが「豚人」を探していると、突然、下水溝の水が膨れ上がり、何かが豚の糞便から姿を現した。周囲は悪臭が充満した。私は急いで鼻を覆い、目を凝らしてみると、ぎょっとした。豚の糞便から上がってきたのは、一人の男だった。彼は髪の毛が長く、粘って一塊となっており、裸の身体にはごみが分厚くくっついていた。皮膚は、全身上から下まで皮膚病に冒されているようだった。彼は私たちを見詰めながら、うんうんとうなっていたが、鼻孔から外へ泡を出し、たびたび、そこから豚の糞を噴き出していた。

 私は胸が塞がれたかのように感じ、吐き気がした。世の中にこのような怪物が存在するとは。彼の家族は、なぜ彼をこのような所に見捨てたのか。

 私たちが「豚人」を探していることは、すぐに町中の噂になった。他郷から様子が少しおかしい3人の男たちが来て、「豚人」を探していると聞き、私たちの様子を見ようと町の人たちがやってきた。私たちは、町の人々に囲まれた。

 神医は彼らに、「豚人」はなぜこのようになったのかと聞いた。町の人たちの話によると、この「豚人」は元々この村の人ではなく、隣村の人であったという。彼の母は20数年前、「破四旧」(旧思想、旧文化、旧風俗、旧習慣の打破)運動の時に、積極分子であったという。その時は、「化粧を愛さず、武装を愛す」とう言葉が流行しており、彼の母は正にこのような女性で、働く時は男の人よりも勢いが凄まじく、率先して「破四旧」運動に参加した女兵であった。彼女は一日中、何の仕事もせずに、何人かの青年をつれて寺を破壊し、菩薩像をぶち壊したりしていた。寺から金銀や宝物などが数多く見つかることもあり、さらに張り切って破壊を繰り返したという。彼女は妊娠した後も鋤を担ぎ、人を連れて廟を壊しに行ったが、廟をぶち壊す時、あまりにも力を入れすぎたため、廟の中で出産してしまったという。出産する時は大出血し、菩薩像を汚してしまい、家に担がれて戻った後、すぐに亡くなった。彼女は目を大きく開き、口は裂け、その死に様はとても恐ろしかったという。その後、彼女が産んだ子供はこのような「豚人」となったが、彼は普通の食べ物は食べずに、糞便の中で転げ回るばかりで、歩きも学ばず、話すこともできず、むやみに叫ぶだけだった。よく人を噛むこともあり、力はとても強かった。家族はみんな彼にひどく噛まれて、父親は彼を山に捨ててしまったという。その後、彼は臭いに沿ってこの村までやって来ると、ここから離れようとしなかった。お腹が空いたら、柵に入って豚の飼料を奪い、食べ終わったら、豚の糞便の池に体を浸すという。彼はもう数年間もここに止まり、村の人々は彼のせいで安寧に過ごすことができないという。

 数人の若者が彼を捕まえて深山の奥に捨てたが、二日も経たないうちに戻ってきて、どうしても追い出すことが出来なかった。彼も一人の人間なので、彼を殺すこともできず、そのまま放置するしかないという。

 神医は、「豚人」を注意深く観察し、小声で、この虫を退治するのは少し難しいようだと言った。持ってきた薬は薬効が足りないかもしれず、自分はあまりにもそれを過小評価したと言った。もし一回でそれをその男の体から取り出すことに成功できなければ、再び取り除けない恐れがあるというのだ。

 平先生は、どんな薬が足りないのかと聞いた。神医は、その薬はとても珍しく、手に入れるのは難しいとため息をついた。神医によると、それは「沈香屑」または「龍涎香」というもので、いずれも世の中で最も貴重な香物で、古い時は帝王家のみが所持し、庶民の家ではなかなか見受けられないと言った。

 平先生は、私たちが行う全てのことは自然に順応するだけでよく、天は全てを按配しているので、それに従って行えばよい、きっと解決する方法があるに違いないと言った。神医は急いで同感を示しながら、年配の人ならば、どこかで目にしたことがあるかもしれない、彼らに尋ねましょうと提案した。神医が村の長老の所へ案内するよう頼むと、その場にいた者のうちの一人が、自分の祖父は88歳で、恐らくこの村では一番年をとっていると言った。私たちは彼について、彼の祖父に会いに行った。

 この老人は80歳あまりで、体は弓のように曲がり、歯も全て落ちていた。彼は訛りが強く、はっきり話すことができなかったので、若者が通訳してくれた。老人は、「龍涎香」は知らないが、「沈香屑」は見たことがあると言った。民国20数年の時、他の村から大工が来て菩薩像を造ったことがあり、彼も見に行ったが、完成したら、「沈香屑」と経文をその菩薩像の腹の中に詰め込み、和尚に開眼させたことがあった。5里(約2500メートル)離れたところに「插花娘娘廟」という廟があり、中に祭られている「插花娘娘」という菩薩像がまさにそれであるという。

(翻訳編集・柳小明)
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