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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2012/02/html/d14064.html
中国崑崙山の仙人(14) 獨臂神医
 八、獨臂神医

 ほとんどの男児と同様に、私のような年の子は、探険などにとてもあこがれていて、何かを恐れることがなかった。平先生が黒魚妖怪を取り除きに行くと聞き、また私と深い縁があると聞いたので、そして、ちょうど夏休みにも入ったので、私は一つの大胆なことを決心した。小さいころ、彼に連れられて、あちこちに地龍掴みに行ったが、今度も彼について遊覧し、見識を広めることにしたのだ。彼がどのように黒魚妖怪を取り除くのか見たかった。きっと神話に書かれているように、見事で、壮大なのだろう。考えれば考えるほど心がワクワクし、決心を固めた。

 私の決断に、父はびっくりしたが、平先生は意外に落ち着いていて、まるで既に知っていたかのようであった。彼は、行脚はとても苦しく、食べ物がないときも、外で寝るときもあり、危険も伴うと言った。

 しかし、私は既に決心していて、命を失うことがあっても恐れることはないと思い、彼に纏わりついて、放さなかった。平先生は少し間をあけてから、振り返って父を見た後、「あなたはまだ小さいから、私について行きたいなら、先にお父さんに許可をもらいなさい。あなたのお父さんが決めないといけません」と私に言った。

 後に父が話してくれたことだが、実は、父も平先生について行きたかったのだという。しかし、口に出さなかったらしい。父は子供の自立を大変重視していて、男はあちこち行って、見聞を広めるべきだと考えていた。それに、平先生なら私をついて行かせても安心できると思い、ゆっくりとうなずいて同意した。ただ、学校には行かないといけないので、夏休みが終わる前には私を戻してくださいと平先生に言った。

 平先生は軽くうなずいて同意した。私は大喜びして、急いで服や歯磨き、歯ブラシなどをカバンに入れ、肩に載せた。普段、父はあまり小遣いをくれないが、今回はたくさんくれた。父は、平先生に離れずについて行って、自分では勝手に行動してはならない、学校が始まる前に必ず戻ってきなさいと言った。そして、早く裏門から出発しなさい、母に知られないように、そうしたらお前は行けなくなるからと言った。こうして、私は生まれて初めて家を出ることができたのだ。

 平先生について三日あまり歩いたある日、私たちは湖北省の西南部に着いた。

 私たちはもっとも暑い正午と午後は歩くのをやめ、眠って太陽が沈んだら、また歩き続け、次の日の太陽が出ると、また涼しい所を見つけて寝た。平先生は、夜は人が少ないから、昼よりも早く前進できると言った。平先生について行くと、まるで風に乗っているようだった。それに、私はあまりにも興奮していたので、全然疲れを感じなかった。

 寝るときは、いつも野外で寝たが、その時になると、平先生は、いつも結跏趺を組み、両目をわずかに閉じ、静かに座って、少しも動かなかった。そして、ご飯を食べる時は、飯鉢を取り出し、村の人に(※)「化縁」に行った。「化縁」してきた食べ物は、私に食べさせ、自分は何も食べなかった。何回もこのようなことが続くと、私は申し訳なくなり、彼も一緒に食べるよう勧めたが、彼は頭を振りながら、自分は普段あまり食べないと言った。我が家に泊まった時には、私たちに誤解されるのを恐れて、私たちと一緒に食事をしただけであるという。

 平先生は、「化縁」は勝手に行うわけではないと言った。もし、たくさん縁を結んでしまうと、それに縛られてしまい、解脱しにくくなるのだという。それを聞いて、私はとても辛く感じた。なぜなら、彼が私の世話をするために、私に食べさせるために、「化縁」してきたので、彼に迷惑がかかったと思ったのだ。

 平先生は和やかに笑いながら、自分と私たちの縁は天が決めた宿命であり、使命があるので大丈夫だと言った。天は縁を結ぶことができるし、それを解くこともできる。今回、見聞を広めに私を連れてきたのも、実は既に定められた縁であり、そうでなければ、私がついてくることはないと言った。私は何か、大きなことが分かったような気がした。

 道中、私は絶えず質問をし、彼は多くのことを教えてくれた。今回取り除きに行くこの黒魚妖怪は、四千年あまりも修めており、ずっと湖底で静修して来たという。洞庭湖は水脈の聚結地で、精華のあるところなので、黒魚は水脈の霊気を得て、水神甲に修めることに成功し、どんな武器にも傷つかなくなっているというのだ。

 元々黒魚妖怪はずっと湖底で身を隠して静修し、厄介事を引き起こしてこなかったため、龍族と互いに侵犯することはなかった。しかし、ここ数年、天象が異常になり、この黒魚妖怪が動き出したのであった。この妖怪は修行に成功したので、自分に匹敵する対象はほかに誰もいないと思い込み、洞庭湖を自分のものにするため、自ら龍族を攻撃したのだ。妖怪は既に龍族を傷つけ、洞庭湖を占領したので、それを取り除かなければならない。もし水脈がそれによって汚染されたら、それで終わりだというのだ。

 ※化縁:托鉢のこと。仏教では、托鉢する僧に食事を提供する人は仏道と縁があり、僧侶は乞食をすることで、その人と善縁を結ぶことができるという。

 (翻訳編集・柳小明)
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