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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2012/02/print/prt_d82801.html
中国崑崙山の仙人(15) 獨臂神医-2
 この黒魚妖怪は神通が大きく、水神甲で身を守っているので、今は平先生さえそれを取り除くことができないという。それを取り除くには、平先生を助けることができる「蜮(ウィ)」(自身の記憶を辿った名前)という怪物がいなくてはならないが、この怪物は六道の中にはいない。やつはとても汚いものだが、それしか黒魚妖怪を傷つけることができないというのだ。

 私は好奇心が涌いてきて、それはいったいどのような怪物なのかと聞いた。平先生によると、それは一種のとても凶悪な低霊生物で、地獄の底に伏していることが好きで、地獄の汚いものを食しているという。世の一部の人間は、偶然、ある特定の時刻と特定の環境で汚いことを行うと、この「蜮」に取り付かれてしまい、それに制御されるのだという。平先生は十数年前、行脚する時に、このようにして偶然に「蜮」に取り付かれた人を見かけたことがあるが、それをその人の体から追い払うことはできなかったと言った。それと対抗するには、まず「獨臂神医」を探し、彼の助けを求めなければならないという。

 この「獨臂神医」とは、名前の通り片腕の名医なのかと聞くと、平先生は笑いながら、この片腕は真体にある聖手のことだと言った。獨臂神医は代々、一人だけの後継者に伝授されており、中国の歴史の名医である扁鵲や華佗なども獨臂神医の後継者であると言った。聖手神医は元々両腕であったが、なぜか唐代の末に事故が起きて、片腕だけが残り、その時から獨臂神医として伝わるようになったという。聖手神医は元々先天道から分岐したもので、彼は前任の獨臂神医の後継者と面識があるが、彼はもういなくなっているため、彼の弟子である現任の獨臂神医の後継者を探しに行くと言った。彼の居場所も知っていると平先生は言った。

 四日目、私たちはある田舎の山で、獨臂神医を見つけた。彼は長い白いひげを伸ばしている老人で、山の間で石屋を建て、自分で食べる分だけの野菜を植えていた。平先生が来ているのを見て驚いた彼は、私をじろじろ見て、また目を細めて平先生を見て、しばらくすると手の平を叩き、大きく笑いながら、長年経っても様子は変わっていないと言った。

 平先生も笑いながら、今日は助けてもらいたくて来たと言った。神医は急いで、恐れ入ると言いながら、何でも申し付けてくださいと言った。彼は平先生の前では、いつも後輩と自称し、平先生を師父の兄と呼んで、とても恭しかった。

 私たちは、神医のところに一日泊まった。四日間歩いてきたので、横になると全身に疲れを感じた。神医は自分が植えた野菜で私たちをもてなし、私はお腹いっぱい食べることができた。神医が作った料理は何を入れたのか知らないが、非常に香ばしくて、食べた後は元気が出てきて、疲れもすっきり取れた。胃の中もとても心地良く、暖かく感じた。神医は、私たちの疲れを取ってあげるために、料理にいくつかの薬草を入れたと言った。彼は、人の病気を治す仕事はもうやめたが、お金がなくなった時は、山を下り、犬皮膏薬を売って、そのお金で生活用品などを買うと言った。そして山に戻ると、野菜を植えることだけに専念し、山を下りることはあまりしないと言った。

 彼と平先生の会話から知ったことだが、神医は70数年前に平先生と会ったことがあるらしい。70年を経たが、彼はいまだに平先生を覚えていた。彼は、何年か経つと、この最後の片腕の聖手も伝承が途絶えると嘆いた。彼は最後の聖手の後継者で、彼がいなくなった後は、聖手も伝わらなくなると言った。彼は、今は漢方医の大劫難で、漢方医はこの劫難から抜け出すことは難しいと言った。世界は凡庸な医者たちによってめちゃくちゃとなり、人も漢方を信じなくなりつつあるという。

 彼によると、現在は西洋人の医学が盛んであるが、それは人類が作ったもので、人類の境界にあるため、人に受け入れられやすく、皆がそれを認めている。しかし、漢方は、上古の時代に神が人に伝えたもので、高い境界にあるため、慧根が足りない一般の人には完全に理解されることができず、歴代には多くの凡庸な漢方医が出現し、それ故、多くの人が漢方を誤解するようになったと言った。特に現代は、多くの人が世の中に迷ってしまい、更に高境界の漢方を受け入れられなくなったので、漢方の天運はもうほとんど尽きていると言った。

 また、神医は一つの例を挙げて説明した。人が学校に行く時は、一年生を卒業して2年生となり、2年生を卒業して3年生となる。このようにして大学まで行くのが普通だが、一年生ばかりの人に、いきなり大学生の知識を教えてあげると、その人は受け入れなくなるばかりが、あまりにもびっくりするため、それからは排斥するようになり、勉強を嫌い、最後には学校に行くのも嫌になってしまう。そうすると学校へ行くのをみるのもいやな感じがして、ひたすら反対するようになる。これが、漢方が堕落した原因であり、彼はもう病気を治すことはしないと言った。彼一人だけの力では、どうもならないことで、これも天が決めたことであるため、何も変えることはできないと言った。神医は言えば言うほど感傷的になり、彼の話に私も悲しくなってきた。

 私は神医を慰めながら、実は私はたいへん漢方を信じていると言った。神医は、もし平先生の弟子さえ漢方を信じなくなったならば、漢方は絶滅すべきだと爆笑した。平先生は、すぐに厳粛な様子で、私とは子弟の関係にはなく、私の師父になる資格さえないと言った。彼はただ私と縁があるだけで、今生は使命を持って私と化縁にきたと言った。神医は、何かを悟ったかのようにうなずき、再び問うことはしなかった。

(翻訳編集・柳小明)


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