引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2010/03/html/d64961.html
中国は、法治国家とは異なる。どんな小さな案件であれ、あらゆる案件が最終的に浮き彫りにするのは、あまりにも深い制度上の問題だ。これは紛れもない、しかし非常に重い事実である。では、どこから手をつければ、その制度を変えられるのだろうか。その答えは永遠に見つからない。実際、制度を変えたいという願望を持った時点で危険なのである。
何でもありの企業買収規則
2000年11月、私は新疆から北京へと居を移した。その原因の一つは、ある国有企業が自らを買収しようと試みた新疆の地元政府を起訴した案件であった。地元政府というのは、新疆のバインゴリン・モンゴル自治州で、中国で最大の州である。
この案件の背景には、「第十五回党大会(略称:十五大)」で打ち出された国営企業に対する大規模改革があった。地元の官僚たちは、北京での党大会から戻ると、中央政府に足並みをそろえる姿を見せるため、この州で最大の国有企業である『巴州農機会社』を無理やり売ることにした。これこそが彼らの「十五大」精神に対する理解であった。
バインゴリン・モンゴル自治州は貧しい。その上、『巴州農機会社』は毎年赤字で、その赤字総額も1億元に及んでいたため、全く買い手がなかった。では、官僚たちはどう相手を説得したのか。彼らは「呉安民」という人物に目をつけ、こう言い放った。「君は買収しなくてはならない。なぜかって。それは改革にとって、発展にとって、安定にとって必要だからだ」
こうして、この国営企業を無理やり相手に売り払った。ところが2年後、この会社に利益が出始める。すると彼らは一転して、この会社を国に返すよう求めた。なぜか。やはりあの言葉である。「それは改革にとって、発展にとって、安定にとって必要だからだ」。驚くべきことに、一文字の増減すらない。
バインゴリン・モンゴル自治州政府はパトカーを出動させ、この会社を力ずくで物にした。私たちは即刻、州政府を相手を起訴したが、ご存知の通り中国共産党のトップ官僚は法律を知らない。いや、それどころか、法律意識の欠けらすらない。彼らは何と、私の所属する弁護士事務所の所長に電話をよこし、「弁護士はこの案件に関わってはならぬ」と強引に命じたのだ。
これを受け、私の所属する弁護士事務所は、泣くに泣けない茶番劇を演じることになる。つまり、「協力者会議」を開き、私に本件から手を引かせる決定をしたのだ。私は、「これこそ、自分たちが弱腰である証しです。私は恐れませんよ」と告げた。だが、彼らも恐怖心だけが理由ではなかった。彼らは、「高くん、君の弁護士歴は2年にも満たない。君はまだ、この制度が分かっていない。もしこんな風に裁判を続けていったら、君は新疆にいられないよ」と応えた。
そう、このようにして私は北京へやって来たのだ。
この裁判は2年ほどかかったが、結果はまずまずだった。会社社長が信義に背き、私に弁護士費用を支払わなかったほかは、すべて円満であった。つまり、政府は彼に会社を返却したのである。ただ政府には彼へ支払う金がなかったので、8千万元あまりに相当する土地で賠償したのだった。
(続く)