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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2010/02/html/d59437.html
高智晟著『神とともに戦う』(22)夫人が見た高智晟(4)
我が家は「船」、夫は「船長」
陕北油田の投資者を弁護した北京の弁護士・朱久虎が逮捕された。高智晟はその知らせを聞くや否や、彼を助けようと陝西省北部の楡林へ急いだ。時はちょうど、中秋の名月。夫の帰りを待ちわびる耿和のもとへ、陝西省の高智晟からショートメールが届いた。高智晟はメールで愛する家族への思いを述べた後、こう続けた。「今、僕は楡林に残り、朱久虎を助け出さねばならない。彼の家族は、彼の帰りを4ヶ月も待ち続けたのだから」 最後に「大弁護士」は自分の行為を理解してくれるよう、妻に頼み込んだ。 わずか数十文字を読むうちに、夫の熱い思いが耿和の心のひだへとしみ渡って行った。「これほどまでに他人を愛するのなら、わが子と妻、そしてこの家族をもっと深く愛しているはずです」 結婚して10数年経つが、二人は夫婦喧嘩をしたことがない。家はいつも和やかな空気に満ちている。「夫は、自分で靴下やパンツも洗うんですよ。部屋は、日頃から整理整頓されていて、食事にもこだわりません。何が食べたいかと聞いても、答えはいつも『何でも食べるよ』。文句なんか言いません」 2、3年前、高智晟が有名になり出した頃、夫の女性関係を案ずる人もいたそうだ。これについて耿和はこう言う。「私はちっとも心配なんかしていません。もし誰かが夫を罠にはめようとするなら、私がすぐに証人になります。夫はそのような人ではありません、と」 高智晟も恐らく、自分は模範的な夫だと思っているのだろう。耿和に「君、僕は心配要らずだろう」と軽口を飛ばす。この洞察力鋭い「大弁護士」が一体わざととぼけているのかどうかは分からないが、妻として唯一気がかりなのは、夫の健康だ。「時間通りに食事を取るのよ」「胃腸の調子がずっと悪いのだから、内視鏡で調べてもらって」など、耿和は口を酸っぱくして夫に言う。 「大弁護士」は年がら年中、全国を飛び回る。夫が遠くへ行けば行くほど、「歯はまだ痛むの。誰かに怒ったりしなかった。お腹を壊していない。全部順調かしら」と、耿和の思いは募るばかりだ。 高弁護士を気にかけるのは、耿和にとどまらない。大紀元ウェブサイトの「中国の良心・高智晟弁護士を応援する」という論壇に、こんな投稿がある。「暗い夜空に一つの星が『高』々と輝く。彼は孤独ではない。人々が彼を見上げているから」 北京司法部が「(高)智晟弁護士事務所、営業停止についての聴聞会」を開いたその日、司法部の役所前に、ある一家3人の家族が訪れた。彼らはかつて、高弁護士の支援を受けたことがあるという。「ほかの弁護士事務所では、みな弁護費用を求められました。でも高弁護士の所に来たら…。さすがに名弁護士だけあって、一銭も求められませんでした」 これを高弁護士は覚えていない。だが、当事者は忘れない。「高さんが大変だ」と聞いた途端に、彼はすぐ杖を突きながら一家を連れてやって来た。高弁護士を応援するためにである。 「高おじさんが政府にいじめられている」そう聞いて、かつて高弁護士の法律援助を受けた障害児の鄒煒毅とその祖母は、いてもたってもいられなかった。祖母はただちに耿和へ電話をかけ、こう告げた。「奥さん、北京だと安全でないのなら、丹東にいらっしゃい。あたしの家に泊まるといい」 晟智弁護士事務所が営業停止に追い込まれたその時、18の省や市にまたがる2008名もの不動産事業主は司法部の意向にかまうこともなく、「晟智弁護士事務所が一日でも早く再開できますように。また、高智晟氏およびその御家族の健康をお祈りします」という内容の連名書を提出した。 また、数多くの法輪功学習者はこれまでと同様に、人権を守ろうとする高弁護士の偉業を誰よりも強く支持し、そして中国共産党に対し、一切の迫害を停止するよう訴えた。 数え切れないほどの投稿、手紙を読み、そして電話を受けた耿和。面識がある人もない人もみな、同様に与えてくれたぬくもりの中で、耿和のやりきれなさや不安は消え去って行った。「我が家が得たものは、格別に多いんです。高智晟について行ったことを、私は後悔したことはありません。夫は深慮遠謀ができ、正しいことをやっているからです。だから、夫と一緒にいると、私の考えも日々変化して行きます。時折うまくやれないこともありますが、夫が一言言ってくれれば私たちはそれを胸に刻み、次は必ずきちんとやり遂げます」 耿和は冗談混じりに語る。「我が家はまるで一艘の船。船長はほかでもない、我が夫です。舵取り、指揮、護衛から観光案内まで全部夫です。私と子供たちはただ目を閉じて、夫について行けば良いのです。頭も使わなくていいし、疲れません。どんな危険に遭うこともないんですよ」 そう、高一家は船だ。船には、最も優秀な船長と乗客を乗せている。神はこの船が穏やかな航海を続けることを許さないが、その名を「吉祥号」という。 (続く) |