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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2009/12/html/d34336.html
高智晟著『神とともに戦う』(13) 我が平民の母 2
 1975年の6月22日、周囲の助けのもと、私の父はようやく40元相当の棺を手に入れた。大きな体を丸めて41年生きた父は、亡くなってもなお体を折り曲げ、つけで買った棺に横たわっている。何はともあれ、こうして父の埋葬問題は一件落着した。

 なんとか父の埋葬を終えた我が家が次に迎えたのは、10年に渡る「サバイバル戦争」であった。母は、この戦いにおける魂のような総司令官であり、また、この心身ともに疲れる戦争で、もっとも多くの重い任務を担う戦士でもあった。こうして子どもの生き残りをかけた、昼夜を問わない母の労働生活が幕を開けた。母は昼間、黄土高原で農作業に励んでいたが、そこではたびたび、聞く者の涙を誘う、母の悲しい叫びが聞かれたという。

 夕方帰宅した母を待っているのは、大勢の子どもたちに食べさせ、オンドルの上に寝かせる仕事である。元気あふれる人でさえ、足腰も立たぬほど疲れてしまう大変な仕事だ。しかも1日働いた後、母は毎日、それに向き合わねばならなかった。子どもがみな寝付いてからは、ほの暗いランプの明りのもと、ときに徹夜にさえなる母の糸紡ぎが始まる。夜なべで欠かさず続けられた糸紡ぎは、すべての子どもに服を着せてやるためであった。夜も更けた頃、私がたまたま夢から目覚めると、決まって糸より車のうなり声が「ブーン、ブーン」と聞こえた。合間にもれる母の押し殺したような泣き声とともに。

 半年もせず、母の体は柴のように痩せこけてしまった。しかも母が昼夜を問わず働いても、子どもたちが生き延びるのに必要な物を確保できなかった。一家全員の命をつなぐこと、そして、母のあまりに重い負担を極力減らすこと。子どもたちはみな、この2つを目指した。しかし、不幸は重なるものだ。体が極度に弱った1番上の兄は、父が逝って1年になろうとした時、昏睡状態に陥った。その日の真夜中、母の助けにもならない悲鳴の中、兄は県の病院へ運ばれて行った。追い打ちをかけるように、災難がまぎれもなく襲ってきたのである。もともと極貧にあえいでいた一家は、再び極限の困窮状態に陥った。やせ衰えた母の体は、またもや残酷な運命に耐えしのいだ。しかし、母は断固として、「再婚し、この苦難に満ちた人生から抜け出してはどうか」という忠告を断った。そして、忠告してくれた相手にきっぱりと告げた。「父なし子になったこの子どもたちを立派な大人に育て上げる、これこそが一生変わらぬ私の悲願よ」。母は、強い決意でそれをやり遂げたのであった。

 父が他界して初めて迎えた春節の頃、我が家は貧しさのどん底だった。その大みそかの午前中、遠戚の叔父さんが豚肉650グラムと、羊肉500グラム強、そして小麦粉1キロを持って来てくれた。その夜、我が家の子どもたちは、母がほかほかに温めてくれたオンドルで車座になっていた。薄切りの肉に火が通っても、子どもは誰1人としてお椀も箸も取ろうとはしない。母は、そんな子どもたちの口に、2口ずつ肉を運んでくれた。

 あの肉の香りを、私は一生忘れることはない。あの大みそかの夜、私たちは世界で最もおいしい肉を食べ、世界で最も暖かい洞窟で時を過ごした。元旦の朝、叔父さんのくれた羊肉に大根を加えて具を作り、あの1キロの小麦粉で餃子を作った。こうして、餃子が食べられたのである。夜も明けないうちから、家族はみなランプを囲み立ち働いていた。その日の朝、私たちはこの世で最もおいしい餃子を口にしたのである。数に限りがあるので、お腹いっぱいにはならなかったけれど。これは父が逝って初めての春節であった。母は、お金ではなく、心と愛情で、終生決して忘れることのない、最も幸せな春節を私たちに送ってくれたのである。

 (続く)
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