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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2008/07/html/d81166.html
≪縁≫-ある日本人残留孤児の運命-(42)「土地改革運動の嵐」
土地改革運動の嵐
私の家が河北の長安村に移ってからほどなく、土地改革が始まりました。隣の王慶図兄さんは、土地改革の民兵隊長で、毎日のように銃を背負っては行き来していました。王喜蘭のおじさんは、毎晩こっそりと養母を尋ねてきました。それで、私の養母は、王おじさんからいろいろな情報を知りました。 うわさによると、「掃討隊」がやってくるのだというのです。掃討隊はよそ者で、彼らは大地主をこっぴどく吊し上げ、世間体など気にせず、また後の報復も恐れないということでした。 数日もしない内に、掃討隊が本当にやってきました。真っ先に目標になったのは、我が家の前庭に住んでいた王兆強さんの家で、彼の家には私とあまり年の変わらない王冬蘭がいました。 彼女の家にはおじいさん、お父さん、お母さん、それからおじさんと弟がいました。彼女の家は、大きくて天井も高いものでした。王冬蘭はいつも人目を引く流行の美しい服を身につけ、毎日カバンを背負って登校しているので、私は羨ましく思っていました。 私が王冬蘭の家に水桶を引き上げるためのカギ型の引っ掛け具を借りに行ったとき、彼女は私を差別しなかっただけでなく、倉に行って私のために引っ掛け具を探してきてくれ、さらにわざわざ長いロープまで持ってきてくれました。 彼女は私に親切で、学校から帰ってきて私が庭で仕事をしているのを見かけると、カバンを背負ったまま私の家の庭に駆け込んできて、進んで私に話しかけてくれました。私は、彼女がカバンを背負っているのを見ると、うらやましく、バツが悪いと思いながらも、中の本を見せてくれないかとお願いしました。彼女は人の気持ちがとてもよく分かる人で、中の本を一つ一つ私に見せてくれました。その上、私に学校でのことを話してくれたので、私も学校に行って勉強したいという気持ちがいっそう強くなりました。 土地改革が始まったその年の冬 土地改革が始まったその年の冬、王冬蘭の家が真っ先に目を付けられて土地を分けられ、彼女のおじいさんは連れていかれました。話によると、彼女のおじいさんは囚われた後、ひどい拷問と殴打を受けたそうです。おじいさんは大変に年をとっていたので、拷問には耐え切れなくて、苦し紛れにこの家にあれこれ財宝があると言いました。 ある日、私がちょうどバケツを提げて、井戸のところまで水を汲みに行こうとしたところ、突然、西の方から多くの人たちがやってきました。王冬蘭のおじいさんはその群れの最前にいて、体をロープで縛りあげられていました。その後ろには、銃を背負った人が二人、そのロープをもってついてきていました。その後には、さらに多くの人たちが従っていました。その多くの人たちのことを、私は全く知りませんでした。またこの村の人もこの群れに混じっていて、道の両脇には見物の女性や子供らがついてきていました。 私はバケツを提げたまま、子供たちの群れに混じって後ろにつき、大通りに立って見物しました。しかし、人が多すぎて、家の中で何が起こっているのか見えなかったし、掃討隊が何を言っているのか聞こえませんでした。ただ屋内の女性が叩かれて悲惨な叫び声を上げているのが聞こえただけでした。私の心は、叩かれて悲しく泣き叫ぶ声にだんだんと身震いがしてきました。 しばらくして、屋内の人たちは王冬蘭のおじいさんを引っ張って、役所の方に連れて行きました。掃討隊が去った後、道端で見ていた人たちは、おそるおそる部屋の中に入って行きました。私も人ごみについていってみましたが、室内は人で一杯で、何も見えませんでした。 私は小さかったので、玄関に立っている大人たちの太ももの間から覗き見ると、王冬蘭のお母さんが地面に横になっているのが分かりました。上半身は何も着ておらず、下半身に柄物のパンツを付けているだけでした。全身を鞭で打たれて傷だらけで、手首は紐できつく縛られていて、血が出ていました。すでに失神しており、長々と地面に横たわっていました。人の話によると、彼女が身に付けていた高そうな緞子の上着とズボンは全部、掃討隊に持っていかれたそうです。室内の箱や戸棚も全部、ひっくり返されてめちゃくちゃになっていました…。 私はこれまで人が他の人に縛り上げられ連れて行かれるのを見たことがありませんでした。ごく普通の人が、闘争で吊るし上げられるのです。そのときの光景は、幼い私の心にしっかりと刻み込まれ、半世紀経った今もはっきりと覚えています。 養母はこの様子を目にすると、こっそりと自分の指輪、イヤリング、ブレスレットなどの貴重品を自分がつくった日干しレンガの中に隠しました。彼女はまた高そうな衣服を一つ一つ小さく包み、夜中に外に出て、棟の後ろに積まれた薪の下にそれを隠したのでした。 (つづく) |