引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2014/01/html/d44210.html
弟子たちは、ミラレパがすでにあの世に逝ってしまい、舎利子が得られなかったことを嘆いて泣き叫び、哀しみの中で祈った。このとき、彼らは突如として空中から尊者の声を聴いた。
「弟子たちよ、悲しむことはないぞ。崖石の下を見てみよ。銘を刻んだ石と供物が見つかるであろう」。こうして、皆が崖石の周辺を探すと、果たして銘が刻まれた石が見つかった。この崖石は、現在でもチューバ寺で見ることができる。
弟子たちは、尊者が逝去したことで悲しみにくれていたが、尊者の言ったことを思い出した。土釜の下に、遺言と黄金があるというのだ。果たして、皆が土釜の下を見てみると、布きれに果糖、それに小刀と砥石が一緒に見つかった。そして、その小刀には文字が刻まれていた。
「この小刀で、この布きれと果糖を切ってみなさい。切っても、切っても、尽きることがないであろう。このようにして、君たちはこの果糖と布をあらゆる人たちに分け与えなさい。この果糖を食べた人、あるいはこの布きれが配分された人は三悪道を免れることができる。なぜなら、ミラレパの食物と服は上師と諸仏が加持しておいたからだ。私の名号を見聞きして、信心さえ起きれば、あらゆる人は七生の中で悪道に入ることがないであろう」
ここまで読んで、皆は最後の一文で大いに笑った。「もしミラレパに黄金があるという人がいたなら、そんな人は糞喰らえだ!」
恩師のこうしたはからいで、弟子たちは極度の悲しみの中に於いても笑いが起こり、心が和らいだ。
そうして皆は小刀を用いて果糖を切ってみたが、切っても尽きず、それは布きれも同じであった。彼らは、さっそくその果糖と布を皆に分け与えたところ、病人はその果糖を口にした後すぐに立ち上がり、下根で煩悩の重かった人も、その果糖を口にした後では、智慧が次第に増して心中が明朗になった。
葬式が始まると、天上から五色の花が降り注いだ。これらの花弁が降り注ぐと、多くは頭の上で消え去った。地上に降った花弁は、まるでミツバチの羽のようで透明で美しかった。チューバ一体の山や谷地は、天から降り注いだこれらの花弁で一杯になり、それは膝位にまで積もった。付近の地方にも雪が降っているようにまた多くの花弁が降り注いだが、葬儀の終了とともにそれらは漸次消失していった。
尊者が亡くなった後でもしばらくは、尊者の記念日になると空中には大きな虹が掛り、満天から花弁が降り注ぎ、人々は良い香りを嗅いで仙楽を耳にし、心身が聖水で洗浄されるようになり、地上ではそれまで見たこともない花が咲いて、奇跡が尽きなかった。チューバ地方では、それから毎年のように豊作が続き、災厄や疾病、戦乱もなく、人々は幸せに暮らしたという。
(完)