引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/jp/2012/12/html/d34364.html
ウェンシーがこの石屋を建ててから、しばらくの時間が経過した。彼は疲労や孤独の労苦を思わなかったばかりか、このとめどない仕事の間は、母親の怨恨や殺人、雹を降らせたことなどを忘れることができた。
だんだんとこの石屋が出来上がり、半分ほどできたところで尊者の師父がやってきた。
「怪力君、わしは前に思いつかなかったのだが、ここは駄目だ。だから、ここに建てるのはやめた。もうこの石屋はさっさと打ち壊して、石を全部山の下まで持ち帰ってくれ」。師父はこれだけいうと、さっさと行ってしまった。
ウェンシーは師父の言葉を聞くと、半分できかかったこの石屋を打ち壊し、石材を一塊ずつ背負って、山頂から山の下まで運んだ。
しばらくして、ウェンシーは石をあらかた全部運び終えた。運び終えると、すぐに師父がやってきた。
師父は、ウェンシーを西の山の山頂に連れて行き、上着を折りたたんで地面に置いて言った。「今度はこのように、階層のある建物を建ててくれ」
今度は、一階を建てるよりも、それ以上の階層を建てるので、更に困難になる。ウェンシーは毎日のように大小の石材や木材を背負っては山に登り、山を上下した。時間が経つにつれて、彼の全身は傷だらけになり、背中の傷は破れては爛れ、またかさぶたになり、階層つきの建物はどのようにしても、建て終えるようにはみえなかった。
身体的な苦痛に加えて、長期的な体力の消耗も激しかった。以前の石屋の疲労が残っているのに、また新しい石屋の苦労がのしかかり、それが点xun_齠冾ニ繰り返され、永遠に彼一人と山との戦いのようであった。肉体的な苦痛に加えて、精神的な孤独感が重なり、正法を得るという元々の興奮は段々と消え失せ、毎日の苦労は言うに堪えないものとなってきた。このような状況であっても、彼の法を求める心は、以前と変わらず燃え盛っていた。彼のこの心だけが、唯一の発奮材料であり、最大の熱源にして、最大の慰めであった。
このようにしてしばらく経ち、日々の苦労にもまして建物はだんだんと半分ほど出来上がってきた。このとき、師父がまたやってきた。
「ああ、この建物はどう見ても、よろしくないなぁ。君は、この建物をすぐに打ち壊し、材料をもとにあった場所に戻しなさい」。師父はこれだけ言うと、またいずこかへ去ってしまった。
ウェンシーはまたしても、半分できかかった石屋を少しずつ壊し、その建材を背負っては山を下りた。このとき、彼は身体的に傷を負っていたばかりでなく、心も折れてしまいそうになっていた。しかし、彼は恨み言を一言も口にすることなく、黙々と石材と建材を山の麓まで運んだ。彼には親しい人や友人がいるわけでもなく、毎日厳しい労働がくりかえされるばかりで、時として師母(※1)が食べ物を差し入れてくれるのが、彼にとって唯一の慰めであった。
師母(※1)…師父の妻。