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引用サイト:大紀元
https://www.epochtimes.jp/p/2019/08/36638.html
【悪魔が世界を統治している】第五章:西側への浸透(下)
目次


6.悪魔を崇拝する新マルクス主義者たち

7.制度に溶け込む左翼の長征

8.ポリティカル・コレクトネスを歪曲する邪悪な言論警察

9.ヨーロッパにおける社会主義の拡大

10.なぜ悪魔の陰謀に騙されるのか

参考文献



6.悪魔を崇拝する新マルクス主義者たち


欧米でストリート革命が流行していた1960年代、若者の無知、純朴さ、彼らが振りかざす理想論を軽蔑する人物がいた。「真の過激派は、もし逆立てた髪の毛が人々と、あるいは組織とのコミュニケーションの妨げになると分かったら、その髪を切る」。過激派活動家として知られるソウル・アリンスキー(Saul Alinsky)の言葉である。アリンスキーは本を出版して学生を教化し、彼の理論を実行させた。彼は何十年にもわたり最も社会に影響を与えた、有毒な共産系扇動者の一人である。

彼はレーニンやカストロを崇拝する傍ら、悪魔を信奉していた。彼は自身の著書『過激派のルール』(Rules for Radicals)の謝辞にこう記している。「私の背後で見守っている最初の過激派への謝辞を忘れないために:すべての伝説、神話、歴史(どこで神話が終わって、どこから歴史が始まっているのか、あるいは、どっちがどっちかを誰が知っているだろうか)から、体制に反抗し、それを非常に効果的に実行したために自分の王国を勝ち得たとして人類に知られている最初の過激派、ルシファーへ」

アリンスキーが「共産系」と言われるゆえんは、つまり1930年代の旧左翼(政治的)や、1960年代の新左翼(文化的)と異なり、彼は断定的に自分の政治的理想を語ることを嫌ったからである。彼は世界を「持てる者」(the haves)と「少し持つがさらに欲しい者」(the have-a-little-want-mores)「持たざる者」(the have-nots)で構成されていると理解した。彼は、「持たざる者」に働きかけ、あらゆる手段を用いて「持てる者」に反抗し、富と権力を奪い、完全なる「平等な」社会を実現するよう提唱した。その一方で、既存の社会体制を破壊することを奨励した。彼は共産左翼のレーニン、あるいはその「孫子」とも呼ばれた。【1】

1971年に出版された『過激派のルール』の中で、アリンスキーは独自の地域社会組織論を展開した。その戦略の一つは、「ある活動を、中毒になるほど長引かせる」「プレッシャーを与え続ける」「脅迫は通常、それ自体より恐怖を与える」「嘲笑は、人間にとって最も強力な武器である」「標的を絞り、それを凍結し、個人化し、二極化させる」。【2】 彼のルールとはつまり、悪辣な手段を用いて目的を達成し、権力を握ることである。

彼の冷淡な地域社会組織論は、世界で実際に適用された時に、その本質を顕した。ベトナム戦争が進行していた1972年、アメリカの国連大使ジョージ・ブッシュ(George H. W. Bush)が、テュレーン大学で演説した時のことである。反戦の学生たちは、アリンスキーに意見を求めた。彼は、従来の抗議集会を行っても退場させられるだけだと述べた。そこで彼は、学生たちにKKK(クー・クラックス・クラン・アメリカの秘密結社、白人至上主義団体)のガウンをまとい、ブッシュがベトナム戦争を擁護すると、プラカードを掲げながら、「KKKはブッシュに賛同する」と叫べとアドバイスを与えた。その通りに行った学生たちは「大成功し、多くの注目を集めた」という。【3】

アリンスキーとその追随者たちは、少なくとも二つの抗議活動を成功させた。1964年、シカゴ市政府との交渉時、彼は2500人の活動家を動員して、世界で最も多忙な空港のひとつであるシカゴ・オヘア国際空港のトイレを占拠し、機械操作を麻痺させる計画を立てた。その直前、彼は故意に計画を漏らし、市政府は交渉に応じることを余儀なくされたのである。【4】

ニューヨーク・ロチェスター市にあるコダック社の黒人雇用を増やすため、アリンスキーは同様の戦略を使った。同市の伝統的な文化活動であるロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団のチケットを買い占め、活動家たちに焼いた豆をたくさん食べさせた。劇場をゲップの止まらない観客で埋め、演奏を台無しにする計画だった。この計画は実現しなかったが、彼は常に交渉の場で優位に立つため、脅迫やその他の策略を使った。

アリンスキーの本は、腹黒い、冷酷な、計算高い人物を想像させる。彼の言葉「コミュニティ(地域社会)の組織」とはつまり、徐々に進む革命のことである。【5】

アリンスキーと旧い左翼たちの間にはいくつか異なる点がある。一つ目として、旧左翼と新左翼にはどちらも、少なくとも彼らの美辞麗句の中に理想論があった。しかし、アリンスキーの場合は「革命」という理想論の仮面をはがし、その権力闘争をあらわにした。彼は、「地域社会の組織者」を訓練するとき、日常的に受講生たちに問いかけた。「なぜ組織するのだ?」ある者は、他人を助けるためと述べる。しかし、アリンスキーは怒鳴り返した。「お前は、権力のために組織するのだ!」【6】

アリンスキーの講習に参加した人物によると、彼の手引書には「われわれは、権力を欲しがらなければ、道徳的ではない…権力を欲しがらないなら、それは臆病者だ」「権力は良い」「無力は悪だ」と書かれていた。【7】

二つ目として、アリンスキーは60年代の若者たちのように、あからさまに政府や社会に反抗することを好まなかった。彼は、可能な限り制度の中に入りこみ、チャンスを待って内部から転覆することを奨励した。

三つ目として、アリンスキーの最終的なゴールは転覆と破壊だけであり、誰かを利することもなければ、社会のためになることもない。従って、彼の計画を実行するためには真の目的を隠し、地域的な、あるいはでっち上げたゴールを提示して人々を動員することが重要だった。これらのでっち上げたスローガンは無害で理に適っているように見えるからだ。市民が動員されることに慣れてしまえば、より過激なゴールのために市民を動員することも容易になる。

『過激派のルール』の中でアリンスキーは言う。「どんな革命的な変化も、大衆の中では消極的な、肯定的な、非挑戦的な態度が先行しなければならない。忘れてはいけない。いったん腐敗など、共通認識されたことについて人々を組織したら、人々はすぐに動くだろう。そこから政治の腐敗、ペンタゴン(アメリカ国防省)の腐敗には自然に、短期間にたどりつく」

アリンスキーから深く影響を受けた民主社会学生同盟(Students for a Democratic Society)のリーダーは、過激な抗議について説明する。「問題はすでに問題ではない。問題は常に、革命だった」。60年代が過ぎ、過激派の左翼はアリンスキーから多大な影響を受けた。彼らはすべての社会問題を現行体制に対する不満とみなし、革命を前進させるための踏み台とした。

四つ目として、アリンスキーは政治を抑制のないゲリラ戦の舞台にした。地域社会組織の戦略は、敵の目、耳、鼻を打撃することだと説明する。彼は『過激派のルール』の中で、「最初は目。大多数の大衆を動員できるなら、公然と敵の前でパレードをして、君の力を見せつける。次は耳。もし君の組織が少人数ならば、ギデオンの方法(全体攻撃)を使う。人数を闇に隠し、騒々しい喧噪をつくり、君の組織の方が敵よりも多いように見せかける。最後は鼻。もし君の組織が非常に小規模ならば、敵の場所に異臭を放つ」

五つ目として、彼は政治的な行動を起こす時、人間の最も邪悪な性質を利用するよう強調する。怠惰、貪欲、嫉妬、憎悪である。時に、彼が起こす宣伝活動はささいな利益を参加者にもたらすが、それは彼らをさらに冷酷に、恥知らずにする。自由国家の政治制度や社会秩序を転覆するためなら、追随者たちの道徳が破壊しても構わない。アリンスキーがたとえ本当に権力を得たとしても、彼は仲間のことを思いやる人物ではないだろう。

十数年後、2人の著名な政治家がアメリカで立ち上がった。彼らはアリンスキーから深い啓発を受け、アメリカの文明、伝統、価値観を静かに破壊する案内役となった。同時に、1970年代より、アリンスキーが提唱した無制限のゲリラ集会が流行した。典型的なのは1999年にシアトルで行われた世界貿易機関(World Trade Organization)に反対する集会である。参加者は吐き気を誘発する薬を服用し、集団で公共の広場や会議場で嘔吐したのである。ウォール街を占拠せよ運動、また反ファシズム運動なども同類である。

アリンスキーが『過激派のルール』の謝辞で「最初の過激派、ルシファーへ」と述べていることは注目に値する。彼は亡くなる直前、雑誌「プレイボーイ」のインタビューで、死んだらあなたはどこへ行くと思うかという質問に対し、彼は「間違いなく地獄へ行くだろう」と話した。彼は、そこで労働階級の者たちを組織する、なぜなら「彼らも私と同じ種類の人間だから」と語っている。【8】



7.制度に溶け込む左翼の長征


「制度に溶け込む左翼の長征」という言葉を提唱したのは、著名なイタリアの共産主義者、アントニオ・グラムシ(Antonio Gramsci)である。彼は、信念で人々を促し、革命を起こして合法的な政府を倒すことは難しいと考えた。革命を起こすためには、道徳、信仰、伝統に対して否定的な未来像を持つ大勢の歩兵が必要である。彼は、労働階級の革命は、宗教、道徳、文明の破壊から始まると考えた。

1960年代のストリート革命が失敗した後、過激派たちは学界へと進出した。彼らは修士や博士課程を修了し、学者、教授、官僚、新聞・雑誌などの編集者・記者になり、主流社会の「制度に溶け込む左翼の長征」を実行した。彼らは欧米社会に深く潜入し、社会全体の道徳を維持するのに重要な機関や組織を内部から腐敗させる役割を果たした。その組織とは、教会、政府、教育システム、立法と司法機関、芸術界、メディア、非政府組織(NGO)などが含まれる。

1960年代後のアメリカはまるで、感染病にかかり、その原因を特定できずに苦しんでいる患者のようである。実際には、「共産系マルクス主義」の概念がアメリカ社会に深く潜伏し、あちこちに転移していることが原因である。

多くの革命家が提唱した理論の中で、コロンビア大学の二人の社会学者が提唱した「クロワード・ピヴェン」戦略は最も広く知られ、またある程度の成功を収めている。

この戦略の理論は、つまり公的な社会保障を利用し、政府を崩壊させることである。アメリカ政府の政策によれば、生活保護の給付金を受ける権利を有する人数は、実際に給付を受けている人数よりはるかに多い。これらの人々が組織されて権利を主張すれば、すぐに国の資金は底をついてしまう。

この戦略の具体例として、全国福祉権協会(National Welfare Rights Organization)がある。1965年から74年の統計によると、生活保護を受けていた母子・父子家庭の人数は430万から2倍以上の1080万に増加した。1970年代、ニューヨーク市の年間予算のうち、28%が生活保護に充てられた。平均して労働者の二人に一人が給付を受けていたことになる。1960年から70年にかけて、生活保護受給者の人数は20万人から110万人に跳ね上がった。1975年、ニューヨーク市はほぼ破産状態となった。

クロワード・ピヴェン戦略は危機を起こすことを目的としている。つまり、アリンスキーのルールの一つ、「敵を敵自身のルールに従わせること」を実践したのである。

レーニンが率いたボルシェビキ革命の頃から、共産党は陰謀と策略に長けている。少人数で強力な「革命」と「危機」を起こし、それを利用する。同様のことがアメリカの政治にも起きている。例えば、一部の左翼の意見は過激すぎて、一般の人々の理解を超えている。議員や役人が、非常に極端な社会的少数派(トランスジェンダー・性同一性障害など)の権利を主張する一方、大多数の市民が抱える重要な問題を放っておくのはなぜか。その答えは簡単だ。彼らは、真に民意を代表していないからだ。

レーニンはかつて、労働組合は「共産党と大衆をつなぐ伝動ベルト」だと話した。【9】 共産主義者らは、労働組合を支配すれば、彼らの票をコントロールできると考えた。彼らが票をコントロールできれば、役人や議員は彼らの指示に従う。従って、共産主義者らは労働組合を支配し、大多数の国会議員や役人たちに、共産主義的な政府転覆政策を実施させるのである。

W. クレオン・スコウゼン(W. Cleon Skousen)は、著書『裸の共産主義者 』 (The Naked Communist) の中で、彼らが挙げた45の行動計画を暴露している。その一つは、「アメリカの一つ、または両方の政党を掌握すること」であり、それはすでに次のような仕組みで達成されたと指摘する。つまり、一般の労働者たちはまず労働組合に加入し、最低限の権利と利益を保障してもらう代わりに、彼らの人質になる。ギャングに用心棒代(みかじめ料)を支払い、その見返りとして守ってもらうのと同じ仕組みだ。

トレバー・ロウドン(Trevor Loudon)によると、共産主義による民主国家の乗っ取りには3段階があるという。

第1段階:政策の策定。冷戦時代、ソビエト勢力は民主国家の政策を策定してきた。その目的は、それらの国家を内部から、平和的に変換させつつ、浸透して崩壊させることである。

第2段階:教化。冷戦時代、数千人の共産主義者らがソビエトや東ヨーロッパで訓練を受けた。訓練の内容は、労働運動、平和運動、教会、NGOをいかに利用して、国内の左翼政党の影響力を増大させるかであった。

第3段階:実行。冷戦終結後、欧米各地に散らばった共産党が、より支配的な役割を果たすようになる。

1970年代と80年代、共産主義イデオロギーに染まったアメリカ人たちが主流社会に入った。彼らは政治、教育、研究機関、メディア、NGOなどで主導的なポストに就き、数世代に渡り、アメリカ社会を内側から変換させた。アメリカは、彼らの手に落ちたのである。

民主主義制度は、個人がある程度の道徳や気質を備えていてこそ機能する。しかし、邪悪な目的を持ち、あらゆる手段を利用する者にとって、この制度は隙間だらけである。自由社会を合法的に転覆する方法は、数多く存在するからだ。

古代中国の言葉がある。「泥棒が盗みを働くことは恐れないが、彼らが盗みを働くことを考えることが恐ろしい」。共産主義者たち、そして愚かにも彼らの代理人となった者たちは、懸命に政治経済の制度を破壊しようとしている。彼らが巧妙に仕組んだ陰謀が数十年にわたり実行された結果、共産主義がアメリカ政府に潜入し、アメリカを含む欧米諸国では今、深刻な腐食が進んでいる。



8.ポリティカル・コレクトネス―邪悪な言論警察


共産国家は、言論と思想を厳しく統制する。一方、欧米では1980年代から、違った形の言論統制が始まった。言論警察は「ポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい言葉遣い)」をスローガンに掲げ、メディア、社会、教育システムを監視し、大衆を巻き込んで言論と思想統制を行う。すでに多くの市民がその邪悪な圧力を感じているが、そのイデオロギーの本質が一体何なのか分かっていない。

「ポリティカル・コレクトネス」「進歩」「団結」これらは全て共産党が長く使用してきた言葉である。それらの言葉の表面的な意味は、女性や障害者を含む社会的少数派に対する差別用語をなくすためである。例えば、「黒人」は「アフリカ系アメリカ人」と呼ばなければならず、インディアンは「ネイティブ・アメリカン」、また不法移民は「書類がない労働者」などである。

しかし、この隠された意味合いは、個人を被害者ごとに分類することである。すると、最も差別されている人たちが、つまり最も尊敬を受け、丁重に扱われることになる。その人物の行為や才能に関わらず、人はこの分類によって主体性が決定される。これが、「アイデンティティー(主体性)政治」と呼ばれるゆえんである。

このタイプの思考は、アメリカや欧米諸国で大変人気がある。この論理で、人種、性別、性的嗜好などのさまざまな方向性とその大きさから判断すると、黒人レズビアンが差別被害者のトップに立つだろう。反対に、異性を好む白人男性は最も社会的地位が高いわけだから、非差別政治の論理では、この部類の人間は最下位にランクされるのだ。

このタイプの分類方法は、共産主義国家で行われてきたことと全く同じである。人々は、革命前の出身によって「紅五類」「黒五類」に分類された。中国共産党は地主や富農を階級の敵として弾圧し、知識層を「臭老九」と侮蔑した。彼らは「貧乏人が一番利口、高貴なやつは一番愚か者」と力説した。

複雑な歴史の流れや個人の社会的背景から、あるグループの人間が社会層の底辺に属することはあり、それを単純に抑圧と断定することはできない。しかし、ポリティカル・コレクトネスは人々の思想に人工的な境界線をひく。ポリティカル・コレクトネスの主張に賛同する人が道徳的で、賛同しない人は人種差別者、性差別者、同性愛嫌悪症(ホモフォビア)、反イスラム主義、などである。

自由な表現を謳歌すべき大学は、すでに思考の監獄となっている。学術的な世界はすでに、政治、経済、文化の問題をオープンに議論できる場ではない。ポリティカル・コレクトネスの名のもと、一部の団体は伝統的な宗教を公共の場から追放しようとしている。さらに、一部の国では「ヘイトスピーチ」の概念を拡大して法に適用し、学校、メディア、インターネット、会社に遵守することを強要している。【10】 これは、共産国家にみられる言論弾圧への一歩を踏み出したといえるだろう。

2016年の大統領選の後、アメリカはさらに分断された。抗議デモは大都市各地で開かれ、言論の自由に対する違反が頻繁に見られた。2017年9月、保守系政治解説者のベン・シャピロ(Ben Shapiro)はカリフォルニア大学バークレー校に招かれ、講演する予定だったが、アンティファ(アンチファシスト・人種差別や性差別などに反対にする団体)の脅迫があった。バークレー警察は三つの警察ヘリコプターを派遣し、セキュリティー費用はおよそ60万ドルに上った。【11】

現場にいたリポーターが学生に「アメリカ憲法修正第一条はどうなったのでしょうか?」とマイクを向けると、彼は、それは適用できないと答えた。【12】 皮肉にも、言論の自由を訴えた1964年の学生運動は、ここバークレーで行われたのである。昨今、左翼たちは言論の権利を利用して、個人が合法的に意見を表明する場を奪っているのである。

2017年3月、アメリカの社会科学者チャールズ・マレー(Charles Murray)は、バーモント州にあるミドルベリー大学で演説する予定だった。彼はそこで暴行を受け、そばにいた教授もケガを負った。2018年3月、ペンシルベニア大学ロースクール教授のエイミー・ワックスは、彼女の著書『ポリティカル・インコレクト』(politically incorrect)という文章を発表したことを咎められ、一部の授業から降ろされた。【13】 ヘイトスピーチに反対する一部の団体は、普通の保守系グループを「ヘイト・グループ」としてレッテルを貼る。保守系の著者や学者がイベントに参加するときの脅迫事件が後を絶たない。【14】

言論の自由に対する左翼の攻撃は、異なる意見を持つ人々の議論を妨げる。実際には、共産主義の邪霊が、邪な心を持つ人間を操り、真実を覆い隠し、高潔な、あるいは正常な意見をも抑圧している。ポリティカル・コレクトネスとはつまり、歪んだ政治や道徳の基準を、高潔な基準にすり替えることである。これが、邪悪な言論警察の正体だ。



9.ヨーロッパに広がる社会主義


社会主義インターナショナルは、1889年にエンゲルスが設立した第二インターナショナルから生まれ、成長した。第二インターナショナルの設立当時、世界にはマルクス主義に基づく政党が100以上存在した。そのうち、66の政党はそれぞれの国で政権を執り、社会主義を掲げた。「社会主義インターナショナル」という名前は戦後の1951年に始まり、世界の社会民主党を構成した。

第二インターナショナルから派生した社会党はヨーロッパ各地に存在し、そのうちの一部は与党となった。初期の社会主義者はレーニンであり、暴力と革命を奨励した。カウツキーとバーンズ(Kautsky and Burns)は、進歩的な革命を推奨した。社会主義インターナショナルにとって、社会民主も民主社会も全く同じであり、両方とも社会主義の新しい制度であり、資本主義にとって代わると主張する。近年、社会主義インターナショナルは160の団体とメンバーを擁する世界最大の政治団体となった。

欧州議会で活発なヨーロッパ社会党(The European Socialist Party)は、社会主義インターナショナルの同盟組織である。このメンバーはEUや周辺国家の社会民主党である。またそれは1992年に設立された欧州議会の政党であり、メンバーは欧州議会、欧州委員会、欧州理事会などヨーロッパ組織の大多数を含む。

現在、ヨーロッパ社会党はEUやノルウェーなど25カ国から32の政党を擁し、さらに準会員や5つのオブザーバーを含めると、全部で45の政党になる。彼らは幅広い活動を行っている。ヨーロッパ社会党によれば、彼らの主要な目的は、社会主義および社会民主運動をヨーロッパ中に広げ、ほかの政党や議員メンバーたちとの交流を図ることである。実際に、彼らは社会主義の信条を活発に推進している。

スウェーデンの与党である社会民主党は、マルクスを指導的理論にしていると公然と発表している。同党の指導のもと、スウェーデンは何十年にもわたって平等や福祉といった社会主義イデオロギーを推進してきた。同党オフィスの広間には、マルクスとエンゲルスの肖像画が掲げられている。

イギリス労働党の基本理念はファビアン社会主義である。先の章で述べたが、ファビアン社会主義はマルクス主義の改訂版であり、社会主義から共産主義へゆるやかに進むことを信条とする。ファビアンは重税、福祉給付金の引き上げなどを主張する。イギリスでは労働党が何度も政権を握り、ファビアン的な社会主義政策を推し進めてきた。

イギリス共産党もイギリスで活発である。同党は機関紙「ザ・モーニング・スター」を発行している。1920年に設立された同党は、ピークの時にはメンバーを下院に当選させたこともある。最近の選挙では、イギリス共産党は突然、与党だった労働党の左派系政治家を支援すると発表した。

労働党の主要メンバーは、資産の国有化と社会主義の実現のために、40年を費やした人物である。2015年9月、彼は圧倒的な人気で労働党の党首となった。この政治家は、何年もLGBTのイベントや活動を行う著名な支持者としても知られる。BBCレポーターがマルクスについての見解を問うと、彼はマルクスを素晴らしい経済学者だと称賛し、「多くの事象を観察している魅力的な人物だ。われわれは彼から多くを学ぶことができる」と述べた。

フランスの社会党は、フランスにおいて最大の中道左派政党であり、社会主義インターナショナルと欧州社会党のメンバーである。2012年、同党の党首が大統領に選ばれた。

イタリアの共産主義のベテランであるアントニオ・グラムシは1921年、イタリアで共産党を結成し、その書記長に就いた。1990年代まで、イタリア共産党は活発に活動し、長い間、第二政党だった。1991年、同党は左翼民主党と名前を変更した。

ドイツも例外ではない。マルクスとエンゲルスを生んだドイツは、マルクス主義を基盤とするフランクフルト学派の影響を受けた。

そのほか、スペイン、ポルトガルなど他の国々でも共産党は活発であり、その影響力は顕著である。東ヨーロッパのみならず、ヨーロッパ全体が共産党に支配された。非共産国家であるはずの北ヨーロッパ、南ヨーロッパ、西ヨーロッパは故意にあるいは無意識に、共産主義イデオロギーとその政策を推進している。ヨーロッパが「敵の手に落ちた」と言うのは、決して誇張ではない。



10.なぜ悪魔の陰謀に騙されるのか


社会学者のポール・ホランダー(Paul Hollander)は、彼の著書『ポリティカル・ピルグリムズ』(Political Pilgrims)の中で、多くの若い知識人たちがソビエトや毛沢東の中国、キューバを視察したことに言及している。彼らはおぞましい虐殺など目にするはずもなく、帰国すると、熱心に社会主義を称賛したという。【15】

共産主義のイデオロギーは邪悪である。歴史が私たちに明確に示したのは、共産主義が及んだ地域はどこでも、暴力、欺瞞、戦争、飢餓、独裁政治が伴うということだ。そこで、疑問が生じる。「なぜ、多くの人々が邪悪の虚言の拡散を助長し、邪悪の従順な下僕となって働くのか?」

例えば、アメリカの人々は時代によって、さまざまな理由から共産主義に憧れを抱いていた。アメリカ共産党の設立当初のメンバーのほとんどは、移民だった。彼らの経済状態は悪く、また地域社会に溶け込むことも難しかった。故国(主にロシアや東ヨーロッパ)からの影響もあり、彼らは積極的に共産党へ入党した。

世界大恐慌の後、欧米では急激にマルクス主義の影響が広がり、ほぼすべての知識人が左傾化した。多くの知識人がこぞってソビエトを視察し、帰国すると講演会や本などで共産主義を称賛した。これらの知識人の多くは影響力を持つ有名人であり、学者、小説家、芸術家、新聞・雑誌の編集者・記者などがいた。

1960年代、ベビー・ブーム世代が大学に入学した。彼らは戦後の豊かな時代を謳歌し、一方で、共産主義に誘導された思想、例えば反体制文化運動、反戦運動、女性主義などの影響を受けた。彼らの次の世代は、教科書から直接、左寄りの思想を学ぶことになった。なぜならば、彼らの教師たちが「終身雇用された過激派」だったからである。従って、「制度に溶け込む左翼の長征」は成功し、共産主義が次世代を再生し、維持していく循環が出来上がったのである。

共産主義を暴いた著書『虚偽の天才』(Master of Deceit)を執筆した在職37年の元FBIエドガー・フーバー(J. Edgar Hoover)は、共産主義活動家を5つのグループに分類している。公式な党メンバー、地下活動家、同調者、日和見主義者(自分の利益のために党を支持する人たち)、愚か者。【16】 実際、極端に邪悪で頑固な共産主義活動家は少ない。大多数のメンバーは、単に取り込まれただけにみえる。

アメリカの記者ジョン・サイラス・リード(John Silas Reed)の著書『世界を揺るがした10日間』(Ten Days That Shook the World)と、エドガー・スノーの『中国の赤い星』(Red Star Over China)は、世界に共産主義を広げる主要な役割を担った。ジョン・リードはクレムリン城壁共同墓地に埋葬された三人のアメリカ人のうちの一人である。つまり、彼自身が共産主義活動家であるということだ。彼が記した10月革命は決して客観的な報道ではなく、入念に書かれた政治的宣伝だった。

エドガー・スノーは、共産主義の同調者である。1936年、彼は中国共産党メンバーに対し、事前にインタビューする内容を伝え、それは外交、敵国侵攻に対する防衛、不平等条約に対する見解、ナチスに対する見解など多岐に渡った。その後、毛沢東はスノーを自宅に招き、インタビューに親切に答えた。もちろん、その答えはすべて、中国共産党のイメージアップを図るために用意されたものである。若くてお人好しのスノーは、陰険な中国共産党のワナにまんまと引っかかり、入念に仕組まれた嘘を世界中に宣伝してしまった。

元KGBスパイのユリ・ベズミナフ(Yuri Bezmenov)は、外国の「友人」を歓迎した時の事を証言している。彼らの予定の一部は、ソビエト対外情報庁が調整する。彼らが視察する教会、学校、病院、幼稚園、工場などはすべて、事前に用意されている。スタッフはすべて共産主義者あるいは信頼できる人物ばかりで、彼らは話す言葉に間違いがないように、何回もトレーニングを受ける。例えば、1960年代にアメリカの雑誌「ルック」(Look)の記者がソビエトを訪れた後、彼はソビエト側が用意した資料と写真を印刷し、出版したのである。

従って、ソビエトの政治的宣伝はアメリカの雑誌を通して宣伝され、アメリカ人を惑わせた。ユリ・ベズミナフは、新聞・雑誌などの編集・記者、俳優、スポーツ選手たちがソビエトに招かれ、騙されたのは仕方ないとしても、多くの欧米政治家たちの態度は許されないと指摘する。彼らは嘘を助長し、自分たちの利益や評判のために、ソビエト共産主義者らに同調したと非難する。ベズミナフは、これらの欧米政治家らを道徳の堕落者と呼ぶ。【17】

フレッド・シュワルツ(Fred Schwartz)は著書『共産主義者になるために、共産主義者をまだ信じられる』(You Can Still Trust the Communists … to Be Communists)の中で、なぜ一部の裕福な家庭出身の若者が共産主義に傾倒するのかを分析し、4つの理由を挙げている。1.資本主義に対する幻滅、2.物質主義的な人生観、3.知識的な傲慢さ、4.満たされない宗教的欲求。知識的な傲慢さは主に18~20歳までの若者を指し、彼らは共産主義の宣伝の格好の標的である。彼らは歴史知識に浅く、権威や伝統に反抗し、自分の民族文化を否定しがちだからだ。

満たされない宗教的な欲求とはつまり、誰もが持っている内なる宗教的な渇望であり、自分自身を超えようとする力である。しかし、教育で詰め込まれる無神論や進化論などが彼らの欲求を阻み、伝統的な宗教では満たされなくなっている。「人類の解放」といった共産主義のスローガンが人間の潜在意識に働きかけ、粗悪な宗教として彼らの欲求を満たすのだ。【18】

知識人は、過激なイデオロギーに騙されやすい。このような現象に注目した研究者がいる。レイモン・アロン(Raymond Aron)は『知識人たちのアヘン』(The Opium of the Intellectuals)の中で、20世紀の知識人たちは伝統的な政治制度を厳しく批判する一方で、共産国家で起こっている独裁政治や虐殺に目をつぶり、寛容であると指摘する。彼は、左派知識人たちが、彼らのイデオロギーを、偽善的で気まぐれな、狂信的で世俗的な宗教に作り上げたことを見透かしていた。
イギリスの歴史家ポール・ジョンソンは『インテレクチュアルズ-知の巨人の実像に迫る』(Intellectuals: From Marx and Tolstoy to Sartre and Chomsky)の中で、ルソーやマルクスを含む彼らに追随した十数人の知識人たちの人生と、その過激な思想を分析した。彼は、それらの知識人に共通するのは、傲慢さと自己中心性という致命的な弱点であることを指摘した。【19】

アメリカの研究者トーマス・ソウェル(Thomas Sowell)は、著書『知識人と社会』(Intellectuals and Society)の中で、これら知識人たちの過剰な傲慢さについて、広範な分析を行っている。

これらの研究者たちが出した結論は、共産知識人たちを冷静に分析した結果であるが、われわれは別の角度から、知識人が共産主義に騙されやすい理由を述べる。共産主義は邪悪なイデオロギーであり、それは人類のどの文化にも属していない。それは人間の本質と相容れないものであり、また自然発生的に人間から生まれたものでもない。つまり、それは外から無理やり植えつけられた産物である。無神論と物質主義の影響のもと、現代の大学は神への信仰を捨てた。科学の妄信や、いわゆる「人間の理性」を掲げ、人々は簡単に邪悪なイデオロギーの信者となってしまった。

1960年代から、共産主義はアメリカの教育制度への広範な浸透工作を行ってきた。さらに不幸なのは、多くの若者は左翼メディアや単純化された教育にさらされ、テレビ、ゲーム、ネット、SNSに夢中である。これらの若者は中身の薄い「お坊ちゃん(お嬢ちゃん)」で、浅はかでしっかりとした世界観がなく、責任感、歴史的な知識、困難に挑戦する気概にも欠ける。共産主義、あるいは共産主義から派生したイデオロギーに染まった両親を持ち、子どもたちは事実を見たり聞いたりしても、歪んだ考えでしか判断できない。つまり、共産主義の嘘が、彼らの周りにフィルターをつくり、それが事実を見通すことを阻んでいるのだ。

人間を騙すために、悪魔は大々的に人間の弱さを利用する。愚昧、無知、自己中心、欲望、妄信。一方で、理想主義や美しい人生といったロマンチックな幻想をでっちあげ、人々を誘惑する。実際、共産主義国家にはそのような幻想は存在しない。共産主義国家を旅行するだけでなく、実際にそこに居住することになれば、それがよく分かるだろう。

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共産主義の邪霊は、偽装して欧米に潜入した。われわれが、具体的な現象を超えたところで、高みから俯瞰することができれば、共産主義の本当の姿とその目的が見えてくるだろう。

邪霊がその目的を達成できた真の理由は、人間が神への信仰を捨て、道徳の低下を許したからである。神への信仰を復活させ、自分たちの心を浄化し、道徳を向上させることによってのみ、邪悪の支配から抜け出すことができる。人類社会が伝統に立ち返れば、邪霊の隠れるところはなくなるのである。

参考文献
[1] David Horowitz, Barack Obama's Rules for Revolution: The Alinsky Model (Sherman Oaks, CA: David Horowitz Freedom Center, 2009), pp. 6, 16.
[2] Saul Alinsky, “Tactics,” Rules for Radicals: A Practical Primer for Realistic Radicals (New York: Vintage Books, 1971).
[3] David Horowitz, Barack Obama's Rules for Revolution: The Alinsky Model (Sherman Oaks, CA: David Horowitz Freedom Center, 2009), pp. 42–43.
[4] “Playboy Interview with Saul Alinsky,” New English Review, http://www.newenglishreview.org/DL_Adams/Playboy_Interview_with_Saul_Alinsky/.
[5] David Horowitz, Barack Obama's Rules for Revolution: The Alinsky Model (Sherman Oaks, CA: David Horowitz Freedom Center, 2009). https://newrepublic.com/article/61068/the-agitator-barack-obamas-unlikely-political-education.
[6] 同上.
[7] 同上.
[8] “Playboy Interview with Saul Alinsky,” New English Review, http://www.newenglishreview.org/DL_Adams/Playboy_Interview_with_Saul_Alinsky/.
[9] V. I. Lenin, “Draft Theses on the Role and Functions of The Trade Unions Under the New Economic Policy,” https://www.marxists.org/archive/lenin/works/1921/dec/30b.htm.
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[11] “Antifa protests mean high security costs for Berkeley Free Speech Week, but who's paying the bill?” Fox News, September 15, 2017. http://www.foxnews.com/us/2017/09/15/antifa-protests-mean-high-security-costs-for-berkeley-free-speech-week-but-whos-paying-bill.html.
[12] Chris Pandolfo, “TRUE COLORS: Student Leader Says 1A Doesn't Apply to Ben Shapiro,” Conservative Review. October 20, 2017. https://www.conservativereview.com/news/true-colors-student-leader-says-1a-doesnt-apply-to-ben-shapiro/.
[13] “Penn Law professor loses teaching duties for saying black students ‘rarely’ earn top marks,” New York Daily News, March 15, 2018, http://www.nydailynews.com/news/national/law-professor-upenn-loses-teaching-duties-article-1.3876057.
[14] “Campus Chaos: Daily Shout-Downs for a Week,” National Review, October 12, 2017, https://www.nationalreview.com/corner/campus-chaos-daily-shout-downs-week-free-speech-charles-murray/.
[15] Paul Hollander, Political Pilgrims (New York: Oxford University Press, 1981).
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[17] Tomas Schuman (Yuri Bezmenov), No “Novoste” Is Good News (Los Angeles: Almanac, 1985), 65–75.
[18] Fred Schwartz and David Noebel, You Can Still Trust the Communists…to Be Communists (Socialists and Progressives too) (Manitou Springs, Colo.: Christian Anti-Communism Crusade, 2010), pp. 44–52.
[19] Paul Johnson, Intellectuals: From Marx and Tolstoy to Sartre and Chomsky, 2007 revised edition (Harper Perennial), p. 225.
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